たいぼく(おおきめログハウス)「”2017 年 8 月までの三冊の同人誌”」感想

たいぼくさんがこれまでに出した同人誌のうち「ブルーモーメントの娘たち」「歯に衣きせる」「島とビールと女をめぐる断片」の三冊についてまとめて語りたくなったのでまとめて語ってみました。
が、そのせいでタイトルがひどいことになっている気がします。まぁ、仕方ないかな……。

さて、本文に先立って、まずはあらかじめ用語の定義をしておきます。
私、本田そこの使う “かわいい” は “対象から知覚される情報が俺の脳を滾る方向で刺激している” という意味です。うん、汎用的ですね。
あと、 “感想” と書いて “作品をダシにして思いの丈を吐き出す” と読みます。はい、自己表現ですね。

それでは以下、本文です。

はじめに

Twitter の RT かなんかで絵を観てめっちゃかわいいと思ったからフォローしたのが始まりのような気がしていますが、たいぼくさんを知ったきっかけとかはもう記憶の彼方にあることなのでさておきましょう。

とりあえず言っておきたいのは、素晴らしいよね!絵の持つ情念!ってことです。

一応この記事ではマンガの感想を書くつもりなんですが、ひとまず先に一枚絵について思うことをちょっとだけ垂れ流します。

たいぼくさんが Twitter に上げてる絵の中で特に好きなのが、その文脈の中に他の “誰か” がいるっていうタイプのやつなんです。
たとえば最近だと

を観て「好き!(ほくろ!)」ってなったり

を観て「青さ!」ってなったりしてましたが、こういうのって。タイプは違えど “誰か” の存在を匂わすやつじゃないですか(豆乳のやつはダイレクトだけど)。

こういうのすっごい好みなんです。

あとで書きますが、たいぼくさんのマンガでいいなって思う要素の一つにシーンの切り抜き方っていうのがあって、ざかざかと感想を書きながら、もしかしたらそこら辺と通じてるのかもしれないなと思ったりしました。

ということで、次からは自分が最近読んだ三冊の同人誌それぞれについて感想を零していきます。普通にネタバレしてると思うから、感想を読む前に全部読むのがオススメですよ!!(とらのあなの Web の通販のやつへのリンク と COMIC ZIN の Web 通販のやつへのリンク)

「ブルーモーメントの娘たち」

1 ページ目からタイトル見開きドーンまでの流れの時点で「あ、これヤッベ」ってなりました。
テンポ良いしセリフ回しの緩急が気持ち良いし画面の黒と光の配分がグラグラを誘うしで「吸引力の高さ!」と思わずにはいられなかった。

違和感を仄かに漂わせつつ進む “二人” 旅行の風景の中で、じわじわとユマが雄弁になっていく。
展開の行き着く先がどこかと思ったら、溜めてた感情を海で吐き出す、空気に溶けこむような白い画面。
夜明け前に挟み込む描写としては日の出のメタファのように見えて、ここからふわっとシーンが遷移していくんだなぁと思ってました。

そしたら次のページであの絵ですよ。タッチも含め、圧の強い異物を容赦なく投げ付けられた。

話の流れ自体は自然なもので、回想に入る準備も整っていたから「まーこういうことなんだろうな」と予想はしていたんだけど、こうやって画面の明るさの落差ってのをどストレートに使って脳を叩かれると、もう無理ですね、顔面キャッチせざるを得ない、視界が一瞬麻痺する。
脳内で「うっわ、うっわ」って叫びを何度もリピートさせてました。

展開の奇抜さとかじゃなくて、普通に演出で刺してくる。揺さぶってくる。マンガいいよなって思った瞬間でした。

ユマと琥珀の縺れ合いはそのままに、人が死のうが過去はあくまで過去でしかなく、大事なのは彼女らのこれからの関係であると示して話が閉じられたのも、その余韻が好みのタイプのそれだったので、読了感はとても爽やかでした。

「ブルーモーメントの娘たち」っていう、これまたどストレートなタイトルは、最後のページに至ってしまえばもはやたった一つの正解としか思えなくなってくる。海なんて二人の “日常” で訪れた幾つもある景色の一つでしかないけれど、名付けによって明確に “娘たち” になった始まりの場所が、その時その場所なんですね。

あとがきにあった “旅行記” を読んでみたいなという気持ちもありますが、焼き直しのような作品は作らないだろうから、そこで表現される予定だった “何か” はきっと別の作品に練り込まれるんだろうなって勝手に思ってます。

冬の寝起きに読みたい一冊ですね。

「歯に衣きせる」

読了後、ボールギャグで口元のほくろが隠れちゃってるのがもったいない!でも見えないからこその云々!という劣情を催しました。あと、お腹のお肉。

たいぼくさんの描く女性の流し目の艶やかさといったらないでしょう、と思っているので、この作品はそれがたっぷりで最高でしたね。
戸惑いの表情から色っぽさを経て嗜虐的なそれに変わっていくという流れが小網さんの「実在性」を強めていて、それがラストのそば屋での会話の「煽り力」を上げてました。
鹿渡くんの背伸びしてる小物感がいいスパイスです。終始楽しい気分で読める作品でした。

ただ、食前には読まない方がいいかもしれません。食後、食後にしましょう。

二人の “趣味” については、自分はやらないけど “普通” の範疇に収まる程度のものだと思ってます。
そんでもってなんとなーくなんですけど、二人の個性として表現されたそれの扱いのシンプルさからして、作者側もそう捉えて演出してんじゃないかって気がしてます。
「背伸びした小物男子」と「承認欲求がちょっと強いしたたか女子」の “日常” もの。
彼らはテンプレ通りの人間でないけれどそもそも大抵の人がそうでしょうよ、という意識のようなものを勝手に感じ取り、共感している次第です。

私も人の食事風景を “見るのは” 好きなので、小網さんかわいい!!が何箇所もあって大変よかった。
お気に入りの表情は、服を着替えさせられたあとのぶちぬきのジト目で、食事と関係ないシーンなんですけど。

それと、あとがきがなんかおもしろかったです。なんでだろな。

「島とビールと女をめぐる断片」

酒を飲みながら読むと一人の寂しさを叩きつけてくれる一冊です。

この作品もタイトルの出し方めっちゃ好き。モノローグ挟み最高って気持ち。なんでこうも心地良い演出を連発できるのでしょう。

噛み合わないセリフの応酬で移動シーンを押し切り、その後はグッダグダのノープランからの野宿っていう、とにかく勢いで読ませる展開が口当り軽くて好きです。
そこで “楽しい” 感を植え付けられてから辿り着いた海のシーンは気持ち良かった。
全体的に雑な旅行のごちゃっとした空気感がすっごく滲み出ていて、「うわー、紙の中に生き物がいるぞ」っていうわけわからん感想を抱きました。

オチにつながる描写のことを考えると 7 割強がどこら辺なのかはなんとなく察しがつくんですが、しかしそうなると実話部分がもはやエンタメで、そういうのめんどうらやましいなって気持ちです。
腰を犠牲に雑旅を召喚する若さですね。

そうそう、たいぼくさんの描く眼の表情の豊かさすごいーっていつも思ってるんですが、この作品だと夜空を見上げるハヤセの瞳とか、「待ってせんぱい」って言ってるシーンとか、ラストのコマのアレとか、あー全部ハヤセですね、主人公ポジ、えぇ、グッときました。

最後のコマについては眼に限らず表情全体が良過ぎてシナプス全部燃え尽きたんですけどね。
肩に残った髪の束、口元に誘われる髪の毛。

はい、脳死です。私は死にました。

おわりに

あのですねー、私、沙村広明さんのマンガがですねー、めっちゃ大好きなんですよ。
おひっこしとか超最高でしょ?
波よ聞いてくれとかさー、あの緩急の付け方ほんと驚異的。
構えたところで絶対首の一本や二本持ってかれるじゃないですか。もう、気持ちいいとしか言いようがないよね。

そしてですね、たいぼくさんのマンガが好きな理由を色々考えてみたら、沙村広明さんのマンガを好きな理由と同じ要素がめっちゃ多いんですよ。

表情の豊かさ、線のタッチ、スパスパと飛び交うセリフ回し、登場人物の振舞いの「不自然さの無さ」、モノローグの使い方、コマ間のテンポ。

挙げようと思えばもっと挙げられる気もしますがとりあえずこれに留めておきます。

とにかくともかく結局ですね、私は「物語のために世界が動かされているのではなく、動いている世界を切り取って演出したものが物語なのである」感が大好物でして、沙村広明さんやたいぼくさんのマンガはその部分がめっちゃ強い、そう感じているのです。
どんなに短かい物語であっても、キャラクターが「生きてそこにいる」というのを大切にしている作家さんが私は好きなのです。

その上で、しっかり読める “作品” として仕上げるために演出力を振るっているのが素敵だなって思うのです。
コマで切り取るシーンの選び方、それの描写の仕方、そういったものが “物語” を捻じ曲げず、しかしより効果的に伝えるという方向に全てまとまっているような印象を持っています。

あまりマンガいっぱい読む方じゃないですけど、きっとどれだけ数を読んでもこういうタイプの “好き” は褪せないままでしょうね。

ということで、たいぼくさんのマンガをもっと読みたいと思う今日この頃、ウルトラジャンプ 10 月号早く出てくれ!!!!(恋は光の最終話も載ってるから多分死ぬ!)


補遺:「「見えないけれどそこにいてね。」と呼びかけて」について

一番最初に読んだたいぼくさんのマンガでした。
確かに紙のやつで読んだ気がするのだけど、探してすぐに見つからなかったので booth で DL 版ゲット。書き下ろしの二人が性的ですごい。すごい。

実を言うと、この作品については言葉にしづらいのです、感想を。

爽やかな傷だらけの物語で、いわゆる「百合」なのかもしれないけれど、自分の中にはまだまだ明確な定義の構築されていない概念なので、それをベースに思いを書き下すのも難しい。
少女たちの置かれた境遇に思いを馳せても誤魔化す笑顔の裏は見通せない。

なんとなくなんですが、この作品と上記三冊の間には何か決定的な違いがあるような気がしているんですよね。
作られた時期に差があるし、そりゃそうなのかもしれないですけど、何か、覆い隠す手法の差異のようなものを感じなくもない(直感を垂れ流してるので意味不明ですがご容赦ください)。

ただ、トロトロと流れるセリフ回しやモノローグの心地良さはここにもあるので、やっぱ読んでて「かわいい!」ってなります。

この作品自体にも「魅了する」力は十分あるよね、ってことなのかしら。

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