【感想】都市伝説、パターン、人間。【都市伝説解体センター】

都市伝説解体センターをクリアしました(3月頭)。
好きなタイプのADVでした。あざみーやジャスミンはもちろん、登場人物は誰もがエッジの効いた性格してて彼らの会話劇を味わうのがとても楽しかったです。
ミステリーADVらしい構成も好みの系統で、プレイ時間は合計12時間弱でしたが、濃度の高い時間を過ごせました。オススメ!

というわけで以下に2ヵ月くらい咀嚼して感じたことをちょっと記していますが、当然のようにネタバレがあるのでご注意ください。

クリアしてからしばらくは「あ〜面白かったなぁ」と反芻してのんびりしていたんですけど、他人の感想を漁ってみたり、プレイ動画を覗いてみたりしているうちに、自分が好きなポイントがなんとなく掴めてきたので、書き残しておきます。

「都市伝説解体センター」というゲーム、(おそらく意識して)全体的に「型」に則った構成や要素で作り上げられている中、あざみやジャスミンはこれといって何か当てはめやすいキャラクター造形をしておらず、状況に応じて多種多様な反応をしてくれるところが清涼剤のように効いてたのかもしれないな、と思いました。

あざみは無垢というか無知というか、主体性は薄いけれど危ういくらいの素直さゆえにブレーキを知らない突っ込み方をするし、ジャスミンは相応の責任感は備えつつも、おそらく根っこにあるダウナー気質(個人の感想です)が要所要所で発揮されて、「ほとんどどうでもいい→可能な限り好きなようにする」の変換で軽快さや適当さに繋がっているであろう振る舞いがよい。

物語全体に薄く広げられた閉塞感の内で、自由で予測不能な挙動をしてくれる存在、気持ちがいいですね。

都市伝説解体センターは、各話が『謎の掲示 → 都市伝説の特定 → 解体 (→奇々解体)』という構成でありつつ、全体は『都市伝説解体センター』自体を都市伝説になぞらえる形で同じ構造をしていた入れ子構造でした。

各話の SNS パートの「悪意」達の再現性の高さについては方々で言及されていたけれど、見覚えがあり再現度が高いと感じられるということは、つまるところそれらの悪意もパターン化された「型」によって量産されたものでしかないことの証左でもあるのだろうと思います。

蔑称としての語法や罵倒の文章構成も日々どこかで見かけるような「型」の通りで、思考の余地を奪うがゆえに容易に作成され大量に世に放たれることになるんですよねぇ、と妙にじっとりした嫌な気分になっています。特にこの感覚を明文化している今。

「型」がわかっていればこういう創作物においても再現度の高い「悪意」を用意しやすいというのはあると思うのですが、そもそも「都市伝説」自体が一種のフォーマットであることを踏まえると、この作品の SNS パートがああいう雰囲気になっているのは意図的なものかもしれないなぁと考えてみたり。

そして、この「型」は違う立場からも悪用できるんですよね。

各話の SNS パートにはゲーム全体を通して”お馴染”のアカウントが存在していたけど、もしかしたらそのうちいくつかは仕込み用のアカウントだったのかも。
事件の方向性を誘導したり燃料を投下したり、はたまたあざみへのヒントとなる言葉をそれとなく仕込んでみたり、「型」を使って有象無象に紛れながらそういった情報操作をするのもお手の物ってところでしょう。
1話で美桜に関する情報を色々出してきたアカウントとか超怪しいなと思ってるんですよ。まぁ、もしそうだったとしてもそれを明言するとあざみと美桜の関係にだいぶキッツイ打撃を入れることになるので、有耶無耶にしておいた方がよいかもしれませんが。

そんな感じでどんよりとした既視感と生々しさに包まれている作品でもあったので、自由闊達暴力辞さずのあざみ&ジャスミンが、夏場のラムネのように胃に染みていました。

だからこそ、終盤も終盤、最後の解体を終えたあとのどんでん返しで一気にプレイヤーを突き放す(操作する余地すらない)展開が心を揺さぶるし、同時に、パターン化された悪意に塗れた環境の中でなんだかんだありつつもやることやってやり遂げた「あの人」に対する爽快感もあったんでしょうか。

タイトル画面に戻ってようやく我々はプレイヤーの立場を取り戻せたけれど、あざみやジャスミンとの接点はもうなくなってしまったのか、それともいつかどこかで物語の続きを一緒に歩めることがあるのか、できれば後者であってほしいと願いつつ、喪失感もまたいい味だから捨てがたいんですよって気持ちもここに残して感想を終わりとさせていただきます。


起きてしまったことに対していつまで悩んでいてもしょうがないですし、切り替えていきましょう!
まぁ、いまさら元に戻せるわけじゃないけどさ。

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本田そこ

小説を書いたりたまに絵を描いたりするかもしれません。 http://sokosoko.info が本拠地です。

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